みなさん、ゴリラのイバンの物語を読んでくださって、ありがとうございます。 

ゴリラのイバンは、ほんとうにいたゴリラです。 

この本のとおり、アメリカのショッピング・モールで何十年も暮らし、絵を描くゴリラとして有名になりました。やがて同じアメリカでも別の地域の動物園に移されました。その後、二〇一二年に亡くなるまで、自然のなかでゴリラらしくのびのびと生活しました。

作者のキャサリン・アップルゲイトさんは、そんなイバンに早くから注目し、新聞記事やインターネットの記事を根気よく集めました。そして、この物語を書き上げたのです。

物語は二〇一三年、アメリカ最大の児童文学賞「ジョン・ニューベリー賞」を受賞しました。

いろんな人や、いろんな動物が出てきて、いろんなことがあって----日本語版は少し厚めの本になりましたが、皆さんに楽しく読んでもらえますよう! そして長く心に残る本となりますように!

ゴリラのイバンと、となりのおりに住むゾウのステラの、月夜のおしゃべり。

いつも元気な野良犬のボブとイバンの、楽しいかけあい。 

かわいくて生意気な赤ちゃんゾウのルビーが投げかける「ゾウのじょうだん」のなぞなぞ。

わたしは訳しながら、動物どうしの会話がおもしろくて、しかたありませんでした。

動物って、なんて頭がいいんだろうと、改めて驚きました。

イバンのひとりごとには何度もはっとさせられました。人間はつい、自分たちが動物の長だと思いがちですが、けっしてそんなことはないんですね。

人間は、今の地球でたまたま一番有利な立場にいるだけです。 

一番有利な立場にいる者こそ、全体の平等のために、気を配らなくてはと思いました。 

「いい動物園というのはね、人間が動物たちに、どんなふうに、つかまえてきたうめ合わせをしているかできまるのよ」 と、いうステラのことば(61ページ)は、今も私の心に響いています。 

最後に、題名のことを、お話ししておきましょう。 

この物語の原題は、“One and Only Ivan”です。 

そのまま日本語にすると、“世界に二つとない”つまり“かけがえのない”イバンとなりますが、日本語版では考えた末、「世界一」とすることにしました。 

イバンは世界一強くて、やさしくて、頭のいいゴリラです。そして、マックにとっては世界一かわいい相棒だったのだと思います。 

翻訳にまつわるくわしい話は、この“イバン特設ページ”にまとめています。

映画化の情報も、こちらでお伝えします。

とっても素敵なイラストを描いてくださった、くまあやこさん、最高にぴったりな日本語版の題名をつけてくださった講談社児童局の松岡智美さん、装丁をしてくださった、デザイナーの脇田明日香さん、ほんとうにありがとうございました。 そして、あなたの手にこの本をとどけるため、力をつくしてくださったすべての皆さんに、イバンとステラとルビーとボブとジュリア--------本の中のみんなに代わって、お礼を申し上げます。 

ではでは、あなたの感想、ぜひ聞かせてくださいね!

〒112-8001 文京区音羽2-12-21
講談社 児童局『世界一幸せなゴリラ、イバン』の係まで
みんなで、お待ちしています!

この“イバン特設ページ”の「ご感想&お問い合わせ」ページからも受け付けています。

数年前に、『ロデオ猿のみわちゃん』こと小猿のみわちゃんとイノシシのうりぼう君が仲良し、というニュースがテレビで話題になりましたね。そんな風に違う種類の動物が仲良くなることは実はよく見かけられることです。最近ではロシアの動物園で、大きな山猫のオリに小さな三毛猫が入り込んで仲良しになっていることがネットのニュースで大人気になっています。同じネコ科動物ではありますが、やはり人間が絶対に近寄れない猛獣の大きな山猫と、ペットになるような小さな野良猫がぴったりとよりそっている姿には皆驚いてしまうようです。

この『世界で一番幸せなゴリラ、イバン』もゴリラのイバンとゾウのステラ、ルビー、野良犬のボブ、そして人間の女の子ジュリアがお互いを思いやって、助け合う、違う種類の動物たちの友情の物語です。

一番幸せなゴリラ、というタイトルがついていますが、幸せには本当は順番はつけられませんから、もしかしたら、イバンと幸せの度合いは同率一位くらいのゴリラがたくさんいるかもしれません。でも、きっとイバン自身は“ぼくは世界一幸せだ”と感じたはずです。この物語をお読みになって、イバンがとても幸せな理由は何なのか、皆さんもぜひ考えてみて下さい。

イラスト くまあやこさん

ゴリラのイバンの物語は主人公のイバン、ぞうのステラ、赤ちゃんぞうのルビー、野良犬のボブが、日々いろいろなお話をしま す。彼らの会話はとても知的で、面白くて、思いやりにあふ れています。彼らに寄り添ってお話を読むうちに、いつしか動物たちの視点にも なって、世界が見えてきたりもします。少女ジュリアとイバンは絵を描くのが大好きで、絵という共通の言語で強く結ばれ、理解しあっています。素敵な関係ですね。ほんとうの幸せとは何か、勇気をもって行動し伝えるってどんなこと?、人間と動物が共に暮らすとは?、いろいろなことを考 えさせられました。

今回、イバンたちの声を聞きながら、絵に描くのがとても楽しく、描き終えて しまうのが少し寂しくもなりました。イバンの物語は、心の奥深くがあたたかくなるお話です。ぜひみなさまに楽しんでいただけますように!

 
 

「One and Only Ivan」

アメリカ版

「One and Only Ivan」

イギリス版